第六章 剣塚
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第六章 剣塚
死の刻
意識も遠くなってきた。
死…初めて体験するものではないような気がする。
結局、彼から逃げることが出来なかった。
彼が与える死も、
静かに受け入れるしかなかった。
目に焼き付く白い光、
彼があの光の下で見せた冷え切った表情……
…それと私に向かって振り下ろされる剣。
剣が振り下ろされた情景。それが私が目を閉じる前に見た最期の景色。
○○:私……まだ……生きている……?
○○:あれは……夢?
あの人……まさか、あの人だなんて……
あの人は……誰?
私は……誰?
両手を少し前に出すと、
体の中で今まで感じなかった力が渦巻いているのを感じる。
倚天:君……
○○:なに?
倚天:いいや……なにも。
倚天の声に躊躇を感じる。何か言いたいことを言い出せないような。
○○:倚天、何か言いたいことが…あるのでは?
倚天:もう剣塚が近い。急ごう。
みんなを見渡し、私は軽くうなずいた、みんなそろって歩き出す。
剣塚への道
拂塵:……
氷魄:拂塵師兄?
拂塵は答えず、氷魄と共に谷へ入った。
急いで追いかけると、谷の入り口にある石碑には「剣塚」の二文字があった。
緑:ここが君がよく夢でみる場所?
私はうなずいた。彼は微笑んで、慰めるように私の肩を叩いた。
緑:なら、この旅も無駄じゃなかったな。
ついに終点に着いたぜ。
金鈴:終点?
まだ君の解毒が済んでないよ?
緑:先に入ったあいつらに追い付ければ、
冰魄針の毒も何とかなるっしょ。
金鈴:そうだね。君の不幸な予言が当たるように、
それも当たるといいけどね。
緑:おいおい、そんなこというなんて、
ひどい奴だな…
倚天:ここは…既視感があるな。
屠龍:同感だ!
さっきの石碑を見たとき、俺もそう思った。
金鈴:君たち、ここに来たことあるの?
倚天:いや…
屠龍:ふんっ、ないな。
昔、故人伝に聞いたことはあるが。
屠龍:今ここがどうなっているかわからんが、
おそらく故人が昔言っていたのとはかなり違うだろうな!
緑:ここにいてもしょうがないでしょ。
そんなに気になるなら、さっそく入ってみようか。
魍魎の巣窟
倚天:こここそ、魍魎の巣のようだ。
屠龍:巣だったら好都合だ。
ここで一気にけりを付けてやろうぜ!
???:これ以上前に進むな!
私達の前に見慣れた人が現れた。
あの古墓で私と倚天を救ってくれたあの人だった。
倚天:クロガネ……
屠龍:やっと姿を現したな。
俺の勘が正しければ、ずっと後をつけてきただろう?
クロガネ:ったく……
どうしてここに来たんだ?
倚天:剣塚のことは、あなたが私と屠龍に教えてくれた。
ならばこの魍魎もあなたの仕業か?
クロガネ:そこまでだ。この先はお前たちが立ち入っていい場所じゃない。
それにお前たちじゃ最後まで辿り着けないさ。
屠龍:笑止!
この世じゃ誰も俺を止められねぇ、お前も含めてな!
屠龍:俺はもう第四重境に到達した、
俺とやり合うなら、お前に勝ち目はない!
倚天:クロガネ、私達を止めたいなら、
ここで一戦を交えるしかないのだ!
自重の約束
まさか屠龍がたった数ヶ月でこれほどまで強くなったとはな。
昔の俺以上だねぇーはは。ただ、なぜそれ程に強くなったのか、知っているか?
屠龍:長い間覇道を目指してきたが、
最近わかった。
天下の覇道とは、天下を守る道だということをな。
屠龍:オレはずっと倚天と戦ってみたかった。この願いは今でも変わらん。
お前も突破できたなら、必ず一戦付き合え。
クロガネ:もういい。俺にはお前たちを止められなかった。
だから進めばいい。でも気をつけろよ!
クロガネは道を譲った。私達は先に進む。すこしして振り返ると、あの大きな影はずっとそこにひっそりと立っていた。
北檀祀陰
○○:行き止まりだ……
緑:ここの祭壇を全てぶち壊さないと、
前には進めないってことか。
金鈴:この四つの祭壇、
なんか気になるな。
私たちは北側の祭壇の前まで進んだ。ここの魍魎たちは、前見たやつらとはどこか違う感じがする。
魍魎の目の前に来ると、魍魎は私たちを攻撃せず、いきなりものすごい声で歌い始めた。
○○:何を歌っているのかな?
魍魎:北方四象、陰。司るものなり。鬼使役し神に通じて、すべてを滅してひとつに帰さん。
倚天:これは歌ではない!
金鈴:うん、
これは法呪だ!
屠龍:さっさとこいつらを切れ!
しかし祭壇の謳う魍魎近づく前に、黒い影に囲まれてしまった。
北の幽吟
最後の呪文を唱えたとたん、祭壇の上にいる魍魎は黒い煙となってそのまま消えた。
倚天:…………
西の祀陽
魍魎:西方四象、陽、司るものなり。鬼使役し神に通じて、すべてを滅して一つに帰さん。
○○:おかしい……
さっきと何か違う気がする。
屠龍:一体何をブツブツと…
金鈴:北の象は陰で西は陽、
四方四象、まさかこれは陣法か?
緑:みろ、また魍魎が集まってくるぞ!
西の幽吟
最後の呪文を唱えたとたん、祭壇の上にいる魍魎は黒い煙となってそのまま消えた。
屠龍:…………
倚天:…………
南の祀柔
○○:また変わった!「南の四象、其の位は柔……」
金鈴:四象……
北は陰、西は陽、南は柔……
残りは、東、剛だ!
緑:金鈴っち何かわかったのか?
教えてくれよ!
金鈴:東西南北、四方四象、陰陽剛柔、この陣はーー
金鈴の話が終わるのを待たず、周りからたくさんの魍魎が私たちにとびかかってきた。
南の幽吟
最後の呪文を唱えたとたん、祭壇の上にいる魍魎は黒い煙となってそのまま消えた。
金鈴:…………
屠龍:…………
倚天:…………
東檀祀剛
こ、これは、どういうこと?
???:早く逃げろ!早く!
緑:お前、何言ってんだ?
私の隣にいた緑は、石柱に縛られてるリョクの隣にまで歩いて行った。まるで鏡合わせのような、傍目から見るとまったく区別がつかない。
???:お前…オレの格好に化けて、この人たちを騙してここまで連れてきて、
いったい何が目的だ!浮生!
○○:浮生……?
緑:あははっはっは!
長い間ここに拘束されたのに、
まだわからないのか?
緑:奇門八卦、四方四象、
丐幇の聖物であるお前が、一番わかってるんじゃないか?
緑:まったく残念だね、
この世に「緑」は存在しないのさ、いるのは浮生だけ。
浮生:お前のマネをするのにはもう飽き飽きしてたんだ。
毎日食い意地を張って、だらしないバカなふりをするの、
ものすごくウザかったよ!
○○:だとすると、
ずっと私たちと一緒にいたリョクは…偽物…?
○○:本当の彼は、
ずっとここに閉じ込められていたの?
浮生:まだわからんのか?
お前らがずっと見てた緑は俺が作った虚像だったんだよ。
○○:目的はなに?
一体なんでそんな手の込んだことを……
打狗棒:浮生!お前の陰謀はうまくいかない!
誰かが絶対止める!
この時、祭壇を鎮守する魍魎が、あの歌のような呪文を唱え始めた。
魍魎:東の四象、其の位は剛、
鬼も神も駆使でき、すべてを殺し一つになれ。
打狗棒:これは……四象皆殺陣だ!
四方四象、陰陽剛柔、
鬼も神も駆使でき、すべてを殺し一つになれ!
これ…以前にも金鈴が言ってた!
私は金鈴の方を見ると、目が泳いでいる。金鈴だけでなく、倚天も屠龍もその場に立ち尽くし、眼の焦点が合っていない。
○○:みんな……どうしたの!?
浮生:驚いたかい?
みんなどうしちゃったんだ?って?
浮生:さっきの三つの祭壇で彼らの属性に合わせて、四象呪術を発動させたんだ。それで彼らの心魂を捕えたのさ。
浮生:今の奴らは心を亡くした傀儡みたいなもの。
最後はあそこに縛られている奴だけだ。
浮生:四方四象、陰陽剛柔、鬼も神も駆使し、すべてを殺し一つになれ!
この四人の血で陣を発動する!
魍魎:一心招請、引魂招来……
打狗棒:はぁー!!
祭壇の上の魍魎はまだ呪文を読み終える事なく斬られ、黒い煙となって虚空に消えた。
浮生:なに?
金鈴:体が……動く……
倚天:さっきの魍魎が斬られたから、陣が発動できなかったのだな。
屠龍:今度こそ、年貢の納め時だぜ!
浮生:ふん、この世界は既に俺の手中にある。
お前らだけで俺に勝てると思ってるのか?
浮生一夢
屠龍:よくも俺らをハメたな!
その命を持って償うんだな!
浮生:ねぇ……
???:…………
○○:貴方は……!?
光が引くと、浮生と先ほどあらわれた人も消えてしまっていた。
宿命の戦い
???:いくらしくじったとはいえ、
貴様をあの屠龍の手に掛けさせるつもりはない。
浮生:四象皆殺陣はもう解けた。
お前はどうする?
???:計画通りで変更なしだ。
貴様が殺せなかった奴は、俺がやる!
屠龍:はははは!それは今まで一番笑われる話だ!
???:ほう?俺に勝てるとでも思ったのか?
倚天:そいつだけではない。私も貴様を誅する。
???:ふん、貴様らがこれ以上俺を困らせ、大人しく死んでくれないのなら、
俺自ら黄泉へと送ってやろう!
無剣の名
あの四人を殺し、四象皆殺陣を発動すれば、貴様を覚醒させられたが。
もう奴らを殺す必要はなくなったな。
目の前にいる人がゆっくりと私に近づいてくる。その顔はどこか懐かしい笑顔が満ち溢れている。
???:無剣よ、久しく会っていなかったが、変わらぬか?
屠龍:無剣?!
倚天:無剣?!
倚天:私がずっと求めているのは……まさか……
倚天は複雑な目で私を見つめていた。私にはその視線に込められた感情を読むことは出来なかった。
○○:私は……無剣……?
○○:夢の中に出てきた光景は……すべて……本当のこと……なの……
目の前の人は私に微笑みかける。
???:この世界は、我々の主人創りし、五剣の世界である。
彼こそ、この世の神だ。
???:貴様らが会ってきた青光、紫薇、クロガネ、そして俺と無剣はこの世の五剣の境界を築く礎となっている。
それに引き換え、貴様らときたら……フン!所詮はただの虫けらだ。
???:無剣出づる、真神
(まかみ)帰す。然し、世は末、災厄来たり。輪廻巡りし宿命来たり。
時が満ち、天命に従い、神の血肉となれ。
突然に、頭の中の濃霧が散り去った。そうか、私は――
私たちの答えを待たずに、彼は浮生を連れて、その場から離れた。
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